戦略確立期(2016-2020年)
米国インデックス投資との出会い──「市場全体に賭ける」発想
2016年、私はこれまでの投資経験の中で、個別銘柄に依存する怖さを身をもって感じていました(第3章参照)。
好調だった銘柄が一転して下落し、業績や経営判断ひとつで資産が大きく揺れる。
そんな経験が、「もっと安定した方法はないか」という思考を促しました。
そこで出会ったのがインデックス投資です。
この頃からYouTubeやWebで投資情報をとにかく見漁り、学び続けました。
市場全体の指数に投資するこの手法は、個別企業の浮き沈みに振り回されにくく、長期成長の恩恵を受けやすいという特長があります。
言い換えれば、資本主義全体の成長に投資するという発想です。
特に米国市場は、世界経済の中心として長期的な成長力が期待でき、投資環境の整備や投資家への姿勢も魅力的でした。
過去の実績や世界企業の集積を考えれば、「やっぱり米国だ」という結論に自然とたどり着きました。
正直、YouTubeの影響は大きかったですね。
S&P500 ETF(VOO)への集中投資を決断
世間の評判もあり、米国株式市場に幅広く分散投資できるS&P500指数に注目しました。
中でも低コストで運用できるETF「VOO(バンガード・S&P500 ETF)」が目に留まります。
投資信託と比べると、ETFは上場しているため市場時間内で自由に売買できる流動性が魅力です。
私のややギャンブル気質な性格的にも、
- 買いたいときにすぐ買える
- 売りたいときにすぐ売れる
この「必要なときに動ける自由度」は大きなアドバンテージでした。
結果的に、長期資産形成の軸をVOOに置くことを決断。
ここから私の投資戦略は、米国市場全体に腰を据える方向に固まりました。
高配当ETF(SPYD・VYM・HDV)で描いた「配当金生活」
インデックス投資を軸に据えながらも、「配当金」という魅力にも強く惹かれました。
利益が現金として手元に入る安心感、そしてキャッシュフローを改善できる点は大きな魅力です。
そこで挑戦したのが高配当ETF。米国の高配当株を調べると、SPYD、VYM、HDVといったETFが浮かび上がりました。
定期的な配当は資産形成のモチベーションにもなります。
この時期に「キャピタルゲイン(値上がり益)」と「インカムゲイン(配当)」の違いも勉強しました。
両輪で資産を育てる戦略を模索していました。
ただ、実際の配当利回りは2〜4%程度で、「思ったより低いな」という感覚もありました。
この数字をどう評価するかは投資家次第です。
為替リスクとの向き合い方──ドルMMFの活用
米国資産に投資するうえで避けられないのが為替リスクです。
投資したいときに限って円安が進み、タイミングを逃すことも少なくありませんでした。
そんな経験から、「タイミングに振り回されない仕組み」が必要だと考えるようになりました。
そこで活用したのがドル建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)です。
円高のときにドルに換えておき、投資タイミングが来たらすぐ米国ETFへ資金を振り向ける。この準備のおかげで、為替の急変にも柔軟に対応できるようになりました。
しかもドルMMF自体も年利5%程度の利回りがあり、資産形成の一部としても有効です。
円高時にドル資産として保有しておくのも有力な選択肢です。
「頭と尻尾はくれてやれ」──タイミング投資の限界
この頃は短期売買にも挑戦しましたが、結果は思うようにいきませんでした。
相場の天井と底を正確に見極めることは至難の業であり、プロでさえ容易ではありません。
「頭と尻尾はくれてやれ」という相場格言の通り、欲を出すほどタイミング投資は難しい。
そう痛感しました。
私は早々にトレーダーの道を諦め、最終的にたどり着いた答えはシンプルです。
「コツコツと積立こそ正解」。
市場の長期的な成長に賭け、淡々と積み立て続けることこそ最大の武器であると確信しました。